お気軽クリニック

耳が遠くなってきました |
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私が患者さんと話す声は、待合室までよく聞こえると言われることがあります。むろん良くないことで、
それほど声を張り上げているのかなと反省します。聴力が落ちているかたにはつい声が大きくなり、
しまいには怒ってもいないのにしかりつけたみたいになって、自分でいやになってしまうこともあります。
「一度補聴器を試してみたけど、うるさくてやめてしまった」という方が多いようです。
「数万円もする補聴器を作ったけど、滅多に使わない」という人もいます。もったいないお話です。
人の耳にはその場の状況でいろいろな音を聞き分ける能力がありますが、補聴器はすべての音を拡大する
ので、雑音まで大きくなってしまい、煩わしく感じてしまうのです。
最初は二人の会話の時だけつけて、次第に着ける時間・機会を増やすという風に、ある意味、適当に
使っている方のほうが慣れて長く使えるようです。話が聞こえなくなると、会話が少なくなり、相手も次第に
おっくうになり、閉じこもるきっかけになったり、ひいては刺激が無くなり「ぼけ」の一因になったりしかねません。
まして病院での会話は不正確・不十分に伝わると治療に支障を来しますから、油断できません。
ただし難聴はひどくなると「佐々木さん」が「ははひはん」のように聞こえてくる場合があります。ですから
大きな声で話すだけでなく、ゆっくり、歯切れよく、相手の理解を待って話すなど、話す側の理解と工夫も
重要です。じっくりお話しすれば、意外と(笑)通じるものです。
またこんな患者さんもいました。だんだんやせて、胃がもたれるという。検査すると貧血がありますが胃は
大丈夫です。よくよくお話を聞くと、あわない入れ歯を我慢して使っているとのこと。つい柔らかいものばかり
食べて、肉を食べなくなり、よくかまずに飲み込むために消化不良を起こしていたのでした。放置すれば
体力の低下から、余病を併発したかもしれません。その意味で「歯が悪いのは万病のもと」。
その方は、新しい入れ歯を作ったところ順調に元気になりました。たかが入れ歯と放っておかずに、
歯医者さんに相談してみましょう。
さらに、腰が曲がって腰痛を訴える方や、歩行時にふらついたりする方に杖や歩行器をおすすめする
のですが、みなさんきまって「いや、まだそんなものにはたよりません」といわれます。見た目が年寄り臭い
というのが嫌われる理由のようです。私はむしろステッキは素敵に見えるのですが。使い始めた皆さんは
一様に、膝や腰が楽になったとおっしゃいます。
「頼るのは弱いこと、情けないこと」というイメージなのでしょうか?でもいまどき若者も含めどこに行くにも
「車に頼りっきり」ですが、だれも「カッコわるい」などとは言いません。杖の方がよっぽど自助的な道具だと
思うんですけどね。
補聴器・義歯・杖などの補助具はその特性を知って上手に使えば生活の幅を拡げ、より快適にしてくれる
ものです。若いモンのお節介と言われるのは承知ですが、「年のせいだから」とばかりいわず、先入観を捨てて、
いちど試してみませんか?(若者は、クルマを少し休んで、からだをつかいましょう!)
(平成15年11月秋田魁新報掲載、一部改変) |
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