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 足がむくんで心配です

 「朝まぶたがはれぼったい」「靴がきつい、靴下の跡が残る」「最近体重が増えた」など、むくみは割に多い
症状の一つです。むくみ(浮腫)とは皮下組織の細胞の外の水分が増えている状態です。向こうずねを
親指の腹で数秒間押して、離したあとに凹みができてすぐ元に戻らない場合、むくんでいると診断します。
身体の6〜7割は水分です。このバランスが崩れるのには様々な原因があります。

 局所的なむくみと全身のむくみとがあります。立ち仕事や座りっぱなしで夕方ふくらはぎや足の甲が
むくむのは、生理的(正常範囲内)なものです。下肢の筋肉は「第二の心臓」といわれ、伸縮することで
ポンプの役割を果たして血液を環流します。ですから、歩いたり、ストレッチやマッサージしたりすることが必要です。

女性は月経前にホルモンの変化でむくみやすくなります。飲み過ぎや塩分のとりすぎでも翌日むくみっぽく
なります。これら一過性のものはあまり心配いりません。


 お腹の手術後に下肢がむくんだり、乳癌の術後に腕がむくむのはリンパ浮腫といいます。主治医に対処法
を相談しましょう。下着やコルセットなどでお腹をきつく締めすぎても血液やリンパの流れが悪くなり
むくみの一因になります。長時間の装着はさけましょう。一日の体重変化が1.5〜2kgあり、
他に明確な原因がないものは、特発性浮腫といわれ、若年から中年の女性に多く見られます。
利尿剤や下剤を服用していた場合が多いようです。また痛みや熱、発赤を伴うむくみの場合は
炎症やアレルギーによるむくみが考えられます。

 常に下半身や全身がむくむというのは重大な病気のサインの可能性があります。うっ血性心不全(心臓の
ポンプの力が低下)、腎不全(尿の出が悪い)、ネフローゼ症候群(尿中に大量の蛋白が流出する)、
肝硬
変(肝臓が新しいタンパク質を作れない)、甲状腺機能低下症(浮腫を来す物質が増加)などでむくみを
来すことがあります。栄養状態が悪くてもむくむため、癌の一症状であることもあります。

 これらの病気は他の症状を伴います。心不全では息苦しい(横になると悪化する)、動悸などの症状、
肝硬変では腹水(腹部膨満感)、黄疸、多量飲酒歴などを、腎不全、ネフローゼ症候群では蛋白尿、
高血圧などです。甲状腺機能低下の場合はまぶたや膝下にはれぼったい感じが出やすく、押しても
へこまないむくみが特徴です。

 このほかまれに、薬剤によるもの(鎮痛剤、漢方薬など)、下肢静脈瘤や深部静脈血栓症による
むくみもあります。

 治療は主に原因となっている疾患の治療ですが、塩分制限や利尿剤が中心になります。軽いむくみは、
塩分を控え、就寝中に下肢を布団1枚分高くすることで、かなり消失します(下肢挙上は心不全では
かえって苦しくなるので注意)。入院してすぐに体重が2〜3Kgも減る方は、日頃の塩分摂取の多さを
物語ります。

 当院ではデジタル体重計で定期的にチェックしています。肥満だけではなくむくみの診断の意味もあります。
むくんでいると来られても、そうでない場合や、逆にひどいむくみに気づいていない場合もあります。
簡単ですから一度チェックしてみましょう。
(平成17年10月北鹿新聞「お茶の間クリニック」)




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