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 睡眠薬、のんでも大丈夫?

 内科でも、睡眠薬や安定剤を飲む方は多くおられますが、「ボケるのではないか」「癖になる」など、
不安や拒否反応を示す方もいます。日本人は睡眠薬に対する偏見や恐怖感が強いとされます。
最近の睡眠薬は安定剤と同じ系列のなかで催眠作用の強いものを使用していることが多く、正しく使えば
安全なものです。

 「8時間眠らないと身体に悪い」とこだわる方もいます。そもそも年齢とともに睡眠時間は短くなり、季節・
運動量でも変化します。結局は「朝の目覚めが爽やかで疲労感がない」ならば睡眠は足りているようです。
高齢者の4割以上に睡眠障害があるという報告もありますが、みなさんが不眠症とは限りません。
7時に寝て2時に目が覚めるので不眠という方も居ました。「休養にならない睡眠、つまり入眠・熟眠障害が
一ヶ月以上続き、業務上および社会的に支障を来す場合」が不眠症の定義です。

 一口に睡眠障害といっても様々です。寝つきが悪い(入眠障害)、夜中にたびたび目覚める
(中途覚醒)、起きたい時刻よりも2時間ほど早く目覚め以後眠れない(早朝覚醒)、
目覚めたときにぐっすり眠った気がしない(熟眠障害)などです。

 睡眠薬は効果が現れるまでの時間、効果の持続する長さが異なり、不眠のパターンや年齢に合わせて
使用します。ですから、睡眠薬を他人にあげたり、もらったり、勝手に量を増やしてはいけません。
また服薬を急に中止すると、副作用が現れることがあります。医師に相談の上で減量・中止します。
睡眠を妨げていた要因がなくなり睡眠薬をやめることへの不安が減ってきた頃が自然な睡眠薬の
やめ時です。

 寝起きが悪い、日中ぼんやりする、頭が重い、ふらつきなどは、睡眠薬の副作用かもしれません。
またアルコールと一緒に服用すると転倒や健忘などの副作用が現れやすくなります。逆に、寝酒での
睡眠は、眠りが浅い、トイレが近くなる、飲酒量が増えがち、などの問題もあります。

 不眠の患者さんの4〜5人に一人はうつ病の可能性があるといわれ、うつ病の患者さんのほとんどが
不眠を訴えます。薬(ぜん息治療薬など)の副作用で不眠になることは意外と知られていません。
また心不全、慢性閉塞性肺疾患、胃食道逆流、むずむず脚症候群などの病気によっても睡眠障害が
起こる場合があり、これらの病気を見逃さないことが大事です。逆に十分寝ているはずなのに日中の眠気が
強く、いびきや肥満を伴う場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性もあり専門医の診察が必要です。

 薬だけに頼るのではなく、生活習慣も見直しましょう。就寝前は過剰な水分、食事、刺激物(タバコ、
コーヒー、お茶、コーラ、チョコなど)をとらない。テレビやラジオは遅くまで視聴しない。夜中に何度も時計を
見ない。あまり早く床につかず「眠くなったらつけばいい」と楽に考える。昼過ぎの眠気は自然のリズムなので
我慢しないで20〜30分昼寝する。また様々なリラクゼーション法を身につけることも有効です。
大切なのは起きる時刻です。強い光を受けてから15〜16時間後に眠気がやってくるといわれています。
朝は外に出て太陽の光を浴びましょう。

 一晩で疲れた心身をリフレッシュしてくれる睡眠とはなんと素晴らしい仕組みでしょうか。
睡眠薬を上手に利用しながら、快い自然な睡眠を取り戻しましょう。
(北鹿新聞「お茶の間クリニック」)




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