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「内臓脂肪型肥満」ってなんですの? |
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脂肪といえば、皮下脂肪が知られていますが、じつは腸や肝臓など内臓の周囲にもたまります。これは
内臓脂肪といい、同じ脂肪でも性質や全身への影響が異なります。内臓脂肪が過度にたまると、おなか
がぷっくりと出てきます。いわゆる中年太りです。
皮下脂肪型肥満は「洋なし型肥満」ともいわれ、お尻・太股・下腹部がふっくらとしていて若い女性に多い
タイプ。内臓脂肪型肥満は「りんご型肥満」といわれ、ウエストが太いのが特徴で、中高年の男性や、
更年期以降の女性に多く、生活習慣病にかかりやすいのはこのタイプ。たとえ少量でも毎日の飲酒習慣が、
脂肪の燃焼を妨げ、いわゆる「ビール腹」の原因になるともいわれます。ただ外見だけではわからないタイプも
あり、このような「隠れ肥満」は、ダイエットを繰り返している人によく見られます。
昔から、肥満、耐糖能異常、高中性脂肪血症、高血圧がそろうと「死の四重奏」といわれ、心筋梗塞
などの冠動脈疾患を引き起こしやすいことが知られていました。日本のある調査では、軽症であっても、
肥満・高血圧・高血糖・高中性脂肪または高コレステロール血症の危険因子を2つ持つ人は、
全く持たない人に比べ、心臓病の発症リスクが10倍近くに、3〜4つ併せ持つ人はなんと31倍にもなる
ことがわかりました。たとえ程度は軽くても複数の危険因子が重複していると、動脈硬化が加速度的に進む
のです。
ところで、なぜ内臓脂肪の蓄積が悪いのでしょうか?その答えの一つはアディポネクチンという物質にある
と考えられています。これは脂肪細胞から分泌されるのですが、動脈硬化を防ぐ作用があります。
同時に抗糖尿病作用も併せ持っていてメタボリックシンドロームのカギになると推測されています。
からだの脂肪が増えるとともに分泌量が増えそうですが、実際には内臓脂肪が増えると分泌量が減ります。
血液中のアディポネクチンが少なくなると、糖を下げるホルモンであるインスリンの効果も低くなる
(インスリン抵抗性)ため、より多くのインスリンを必要とするようになり、糖尿病、高血圧や動脈硬化に
つながります。これらが様々に影響しあって、心筋梗塞や狭心症になるリスクが高くなると考えられます。
では、どうすればいいのか。内臓脂肪を減らすことです。幸いアディポネクチンは内臓脂肪が減少すると
増加します。しかも内臓脂肪は皮下脂肪に比べてつきやすいけれど減りやすいのです。
「ベルトの穴一つゆるめば寿命が1年縮む」という言葉からすれば、その逆も真実です。
見た目の問題ではなく内臓脂肪型肥満は明らかな生活習慣病の危険因子なのです。
運動は筋肉の血流を増やしインスリン抵抗性も改善します。ストレス発散も含めればカロリーの消費
だけでない効果が期待できます。「脂肪はストレスに対する心の防御でたまる」という心理学説もあるほど
です。「週に4日は休肝日」「車を使わずに歩こう!」です。酒と脂と油(ガソリン)を減らし笑顔を増やして
「生のシンフォニー」を奏でましょう!
平成17年9月北鹿新聞「お茶の間クリニック」 |
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