お気軽クリニック目次
お気軽クリニック


 もちがのどに詰まったら

毎年正月には、もちを詰まらせて窒息というニュースがあります。過去にはパンの早食い競争で窒息死した
学生の事故もありました。もちは粘り気が強く、大きな塊のまま飲み込むと気道の入り口を塞ぎやすいので、
お年寄りや、病気や麻痺のため飲み下す機能や吐き出す力が弱い人は注意が必要です。成人で異物を
のどに詰まらせる場合は何らかの病気を持っている人に多いとされ、高齢の他に歯の欠損、飲酒の影響が
大きく、長期入院と鎮静剤の内服も危険因子として挙げられています。

まずは予防が大切です。もちは、ご飯をはしで食べる時の1、2口程度に小さく切る。お茶や雑煮の汁などで
のどを湿らせる。ゆっくりとかむ。一人の時や酔ったときは食べない。もちを口の中に入れたままで話をしない、
周囲も話しかけないようにするなどです。

窒息の最初の症状はせきこみですが、激しくせきこむと助けを呼べなくなります。窒息のサインはさまざまです。
のどのあたりを両手でかきむしるような動作、呼吸や話す力が徐々に弱くなり止まる、甲高い音やいびきの
ような音を出す、顔が真っ青になったり、けいれん発作を起こしたり、意識がなくなることもあります。
これらに早く気づく必要があります。

いざという時は、家族でも隣家でも応援を求め、できるだけ早く119番して救急車を呼び、到着するまで
応急処置を施しましょう。窒息による呼吸停止から4分経つと蘇生の確率は50%に、5分で25%にまで
減ってしまいます。

@まず、もちを詰まらせた人の口の中をのぞく。もちが見えたら、指にガーゼなどを巻き、円を描くようにして
拭き取る。この時もちを奥に押し込まないようにすることが大切です。

Aもちが見えない場合、うつむかせて、両肩の肩甲骨の間を平手で力強く4〜5回たたく。その後、口の中を
確認し、もちが見えたら指で取る。一人がけのいすの上に腹ばいにさせて、たたくのも良いでしょう。もちを
詰まらせた人が倒れている時は、横向きにさせて、片方の手で背中をたたいて、同様に指で取り除きます。

Bハイムリック法:上記の方法でだめな時に考慮します。これは上腹部と胸を圧迫して、のどに詰まったもの
を吐き出させる方法です。後ろから上半身を抱くようにして、右こぶしをみぞおちにあて左手を添え、力強く
手前に引き上げ、上腹部を圧迫します。詰まったものが出るまで、強く引き締めて4回ほど圧迫を繰り返し
ます。ただし、強すぎると内臓破裂の恐れがあります。小児の場合は力を弱めます(乳児や妊婦には
行いません)。この方法は、意識を失ったらすぐにやめます。

このほか、掃除機の吸い込み口に細いノズルをつけ、口の中に入れて吸うという方法もあるようですが、
安全が確立されたものではありません。救急隊と相談しつつ臨機応変な対処が必要です。

最近は体外式除細動器が普及して蘇生術の講義を受ける方も増えているようですが、このように比較的
簡単な方法で命を救う可能性もあり、ぜひ心にとめておいて頂きたいと思います。安心で穏やかな正月を
お過ごしください。
(北鹿新聞「お茶の間クリニック」掲載)




トップへ



前へ